FIV, na und? (FIV、それで?)
我が家の担当医は病院の副院長先生です。(野村萬斎似! いやだからどうというわけでは。)
先生はK里大学の大学院を修了し、研究対象は猫後天性免疫不全症候群(FIV)でした。 ご自宅でも猫を飼っていて、その子は二年前病院の玄関先に、一個のカバンにぎっしり詰めて捨てられていた子猫11匹(!)のうちの一匹です。11匹まとめてっていうのもすさまじいですが、柄と大きさからみて二グループに分かれるので、母親は二匹だろうということでした。多頭飼いのおうちで生まれちゃったんですかね。 そのときスタッフと医師全員で11匹を手分けして引き取ったそうです。みんな半泣きだったとか(笑)。 笑えないだろ。 したがってこの病院の職員は猫飼い率が高いです(笑)。 もちろん、猫の飼い主だからって猫をひいきしてません。どんな動物にも愛情を注ぎ、わけ隔てなく診察します。 ただ、「猫派?」て思うと、こちらで一方的に親近感が湧いてきます。 さてその副院長先生に、ある日、FIVについて これはFIVワクチン接種を勧めるパンフレットの記載の一部です。 読みにくいですが、右と左の記述が矛盾しています。 FIVの感染経路の説明で、 『食器やグルーミングでうつることはあり得ない、』 と断定している。 なのに 『多頭飼いの中にFIVキャリアの子がいると他の子にうつる可能性がある、』 とも。 感染経路として、はっきり猫同士の喧嘩の咬み傷を挙げている。 家庭でのグルーミングなどでは感染しないとも断言している。 ならば多頭飼い云々の記述は誤りではないかと先生に問い質しました。ひとつ屋根の下で暮らす家族同士で流血を伴うような咬み傷が生じるわけがないのですから。 先生は困った顔をして、そこが製薬メーカーとしては苦しいところなのです、と仰いました。 FIVの感染ルートが、母子感染以外では、ほぼ100%猫同士の咬み傷であることは間違いない。しかし、イエネコ全体に占める野良猫の割合が膨大で、絶対数に対する野良猫の検体数が十分ではなく100%を謳えない。 「これまでの調査研究で、咬み傷以外でFIVに感染した症例はないんです。ただ、それを野良猫全体では実証できないから、ボカした言い方しかできないんですよね。」 「食器だの毛づくろいだの、そんなものでは感染しないので、食器を別にしたりさわったら手洗いとか、必要ないとボクは思ってます。」 それから、と先生は続けます。 先生のお話は、衝撃でした。 「多頭飼いのおうちで血を見る喧嘩って、よくあるんですよ。」 よくある? 「だからパンフレットのこの部分は、そういうお宅を想定してるんです。」 「この病院にもそういうおうちの子がよく連れてこられます。多すぎて誰にやられたのかわからないけど家の中で喧嘩して大怪我したとか。FIVに感染したけどどの子が感染源かもわからないとか。」 「5匹6匹じゃないんです。野良猫を次から次へと家に入れて、しかも避妊しないからその猫たちがまた子猫を産んで何十匹にもなる。中には当然相性の悪い猫同士もあって喧嘩もよくある。険悪な仲同士を隔離して住み分けてるうちもありますけどね。」 多頭飼育崩壊は、ネットでよく目にします。 でも、この病院でも、うちの近所でも、そんなことがあるなんて。 そんなおうち、稀ですよね? 特殊なケースですよね? 「多い、とはいわないけど、そういうお宅、よくあります。決して珍しいケースじゃない。」 猫たちは、そういう飼い方をされて幸せなんでしょうか? 「何を以って幸せかどうかというのはわかりませんが、少なくとも飢える心配はないし雨の日も寒い日も家の中で暖かく過ごせます。野良で外で辛い思いするよりはずっといい。」 頭が混乱してくる。 でもせめて避妊ぐらいしてほしい。こっちは捨て猫一匹のおうち探しで苦労しているのに、片方でポロポロ増やす家があるなんて。挙句に喧嘩させて病気広げて。 「僕もこの仕事してて、虚しくなるときがあります。」 穏やか(&ハンサム)な先生の顔が、辛そうにゆがんでいました。 FIVから深刻な多頭飼育の現状に話が発展して。根の深い問題です。 ではFIVの発症率は? 「外の野良猫は寒さや飢えや恐怖など常に強いストレスを抱えていますから、感染したら二、三年で必ず発症します。でも家の中で快適な生活をしてたら、FIVを発症することは滅多にないです。」 「罹患率でみたら、肝臓腎臓などの内臓疾患や癌のほうがずっとかかる率が高い。 FIVを発症する前に別の病気になる可能性のほうが高いのです。 FIVキャリアのまま長生きして老衰で死ぬ子、多いですよ。」 でも先生、ネットでは、2年で30%発症するという医者もいましたが。 先生は首をひねりました。 「2年で30%は高すぎますね。どういう調査方法とったか知らないけど。 その子の先天的なものか、人間には気づかない何かがストレスだったんじゃないかな。」 「研究室ではFIVキャリアの猫を飼育するんですけど、だれも発症しないんです。」 (研究室の猫って、どこから?とか、そういう質問は無しでお願いします。) 「暖かいケージの中で大事にされて、規則正しく栄養のあるものもらってたら、発症しないんですよ。」 FIVの症状は重く、猫は苦しみながら最期を迎えるといいます。 でも、苦しまずに死ねる病気なんて、あるんでしょうか? 万一うちの猫に感染したらいやだから? 万一発症したらいやだから? 早死にされるといやだから? 苦しむのは見たくないから? もちろん、100%の答えはどこにもありません。 ただ、室内飼いの猫の死亡原因に占めるFIVの割合はごく僅かです。 FIVを発症しなくたって、何かの病気でいつかは必ず死ぬのです。 寿命の長さも、神のみぞ知る。 もじもじ恥ずかしがりの、仏頂面トキちゃん、 可愛い可愛い(笑)トキちゃん、 トキちゃんはFIV(猫エイズ)キャリアです。 それが何か?
by suessekatzen
| 2010-03-31 23:34
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